斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (3)
先日の斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (2)の最後の局面で指されたponanzaの一着は...
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後手のponanzaが△8五歩と突いた局面
山本「これはどういう意味なんですか」
斎藤「これは、▲同角と取らせて角の働きをちょっと弱めたのと、▲同角には、じっと飛車を△9一飛あたりに逃げておいて、のちの△8二香から△8一香というルートも作りましたね。先手玉の玉頭攻めですね。だから、もう攻める焦点は7筋8筋9筋しか無くなっています。逆の2筋から攻める手はないじゃないですか、後手からは」
山本「そうですね」
斎藤「だから、先手も7・8・9筋で指す手が多くなっていきますね」
山本「この後、挑戦者が勝つとしたら、どんなヴィジョンなんでしょうかね」
斎藤「うーん、そうですね、この9一の飛車をうまく抑えこんだり、一番良いのは取る展開ですけど、結構難しいですね」
山本「取りきるのは」
斎藤「そうなんです。先手の8五角とか6八角って、今ちょっと使いづらい局面で」
山本「そうですよね、頭が丸っこくて」
斎藤「そう、7四に(角が)もう一回出ても何も当たらないじゃないですか。だからですね、正直言って、この形の先手が戦いにくいっていうのが、よくある見解ではあります。でも、後手も今歩切れなので、▲7五歩と取って、△9六歩がないので、頑張って受けきるしかないわけですね」
山本「こういうタイミングで、どこかで2筋3筋4筋から反撃したかったような気もするんですが」
斎藤「したかったんですけど、現状ではもうないんです。▲4五歩や▲3五歩っていうのは、後手に攻めの歩を与える手になってしまうので、(先手が歩を)突く展開はちょっと少なくなってきましたね。もう、後は、7・8・9筋の手が」
山本「ここでガッと塗りつぶしちゃう感じなんですかね」
斎藤「そうですね、後手としてもここで攻めていくんじゃないかなと僕は思うんですがね。攻めとしてはいろいろあります。△9二香、△8二香、△8四銀…そのあたりが候補で。でも、何か落ち着いて△3一玉とか」
山本「△3一玉好きそうですよね。ああ、でも (△8二香を) 打ちましたか」(第12図)
戦ってる最中に玉が寄れるのがプロの妙技
山本「でも△3一玉は負けにくい手ではありますよね」
斎藤「ええ、そうなんです。△3一玉が悪手ってことは少ないと思います。▲8五角にずっと睨まれてるっていうのも嫌なもんですからね。でも、どこかで△3一玉というのは決め手に近い手に、コンピュータとしては持ち込みたいんじゃないかなと思いますね。(△3一玉と) 寄られて不利なときは大差ですね。攻めなくても、攻めが繋がっていると思ってるわけですからね。寄られたときは (負けを) 覚悟してしまうかもしれませんね、もう」
斎藤「△3一玉はコンピュータも好みだと思うんですけど、プロも好みですよ。戦ってる最中に玉を囲うっていうのは強い証だと」
山本「米長先生の本に書いてありました。『米長の将棋』に書いてありましたよね」
斎藤「ええ、そうです、そうです」
山本「『戦ってる最中に玉が寄れるのがプロの妙技だ』みたいなことが」
斎藤「攻めの見通しが立ってから玉が寄る手には好手が多いんですね」
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攻め一辺倒になりがちな自分にとって、△3一玉の発想はとても勉強になります。この後、斎藤五段は森下システムの問題点について解説します。
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