ぶたろうノート

棋力向上のための覚書

斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (4)

山本一成さんご本人が、blogやtwitterで言及してくださったことで、このblogへのアクセスが突然増えました。大変有難いことです(小心者なので突然の出来事に正直震えました)。 あらためて、山本さんにお礼申し上げます。

というわけで、前回の続きです。森下システムで定跡化している▲7四角が疑問手である可能性と、森下システムはなぜ雀刺しに弱いのか、という話が中心です。

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▲7四角の疑問手の可能性

山本「下手そうに香車が並んですますね」(第13図)

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斎藤「いやいや、でも積極的で」

山本「これは△7五香を受ける形が少ない…」

斎藤「そうなんです、ひと目はPonanzaペースですね。▲7四桂と打ちましたが(第14図)…これ、銀香両取りですけど、△同香▲同歩となったとき、また△7五に空間が空きますから、△7五桂、△7五銀どちらも嫌味ですね」

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山本「そうですね」

斎藤「これを受けきるのはなかなか難しい…プロでもここからはなかなか大変だと思いますけれども」

山本「そもそも攻めているほうが、気分が良いですからね」

斎藤「良いですね、うん。△4一玉型っていうのは、一見危ないように見えますけど、実は弱いのは飛車だけです、正直なところ。飛車を渡すことも、9一にいればないですから。…だから、実は定跡とはいえ、▲7四角あたりに問題があるって示されている可能性はありますけどね(再掲第9図)」

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森下システムはなぜ雀刺しに弱いのか

山本「森下システムに対して、雀刺しが天敵っていう話だったんですが、これってどういうことなんですかね」

斎藤「そうですね、じっくりした作戦ですよね、森下システムは。雀刺しの戦い方というのは、後手の他の攻めの駒組みに比べ、早いところがあって、だから早さに勝てなかったというのがあるんですよ。先手は、▲4七銀~▲4五歩からゆっくり攻める形もあるし、▲5七銀~▲6五歩から守りに徹する形もあるんですけれども、保留してる故に、選ぶ時間がどうしても遅いじゃないですか、どれかに絞る形が。この将棋もまさにそういう展開だと思うんですけど。保留しすぎてるって、プロは判断しましたね。ある程度のところで形を決めないといけないかなというのが、雀刺しの早さによってそういう見解に変わっていったというのがありますね」

山本「保留するから…」

斎藤「保留するから、相手の攻めの方が早かったわけですね。雀刺しほど早く攻めれる形って少ないと思うんです。一旦玉を囲う戦い方の方が多いじゃないですか、相矢倉は、特に。相矢倉で△4一玉型で戦う指し方が出てきたのが、森下システムとしては誤算なんですよね。これ、入城しあう将棋なら結構戦えるんですよ」

山本「雀刺しが来たとしてもですか」

斎藤「ええ、囲ってからの雀刺しはちょっと遅いですね。こっち(先手)が仕掛けの形を作れてるので。この展開は、森下システムにとって一番キツい展開になってますね。雀刺しが決められた感じですね。こうなってみると、やや▲4七銀型は良くなかったです。▲5七銀~▲6五歩~▲6六銀という形を見せておけば、△7五歩の瞬間が大丈夫だったですよね、▲同銀と取れますから」

山本「なるほど、そうですね」

斎藤「攻めも見せた▲4七銀型が結果的に、早くも…と言ってもまだ指されてますけど、実はこの局面(第15図)は、ほぼ敗勢なんですけれども、アマチュアの方が。(▲4七銀型が)その原因になってしまったかなという感じですね」

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いかがでしたでしょうか。「相手の出方をうかがおうとする森下システムに対しては、△4一玉のままの雀刺しが早い」ということをバッチリ覚えましたね。これで森下システムがテストに出ても、怖くないですね。

 

前回までの記事:

斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (1)

斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (2)

斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (3)

斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (5)