ぶたろうノート

棋力向上のための覚書

斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (5)

「斎藤慎太郎五段『森下システム』について語る」の最終回です。深浦流について、そして将棋の攻めの基本の話です。

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深浦流について

山本「今もプロ棋界では、森下システムには雀刺しが、強烈な天敵なんですかね」

斎藤「そうですね、雀刺しに対して、▲5七銀型でどう耐えれるかっていうのが多いですね。だから、雀刺しの時、▲4七銀型はバランスが悪かったかもしれませんね、先手の方は」

山本「深浦流とかは…」

斎藤「あるんです、あるんです、そうです、そうです。雀刺しは端に駒が集中する展開ですから、深浦流(参考3図)っていうのも出たんです、森下システムで。中央を突破していく作戦ですね。それは、だから端に偏っている相手を見て、中央っていう」

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山本「やっぱり相手を見て対応するんですね」

斎藤「相手を見て対応するのが森下システムの特徴です。(森下システムは)良いところも勿論あるんですけども、(本譜の)この展開は厳しいですね。見るとわかると思いますが(第18図)、(先手の)3八飛、3七桂、4七銀の形が捌けてないのが、やっぱりね。一方、相手は9九龍ですから」

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玉を攻めるときは、守りの金銀を攻める

斎藤「ここから▲6二と△7五桂または△8七成桂…△8七成桂は▲同金に△6七馬を見せてる手なんですけど。とにかく、6七の金に照準をあてれば、厳しいかなというふうに思いますね」

山本「よく言われますが、王様を攻めるときは王様を直接王手せずに、周りの金銀を攻めるっていうのがありますね…」

斎藤「そうですね。それによって、玉が自動的に弱体化していくので、あまり難しく考えることがないですね。玉を(直接)攻めていくと、どうしても面倒なことになるほうが多いですね」

山本「それは、何でなんですかね」

斎藤「玉を攻めていると、守りに阻まれるんですよ。玉に阻まれているわけではなくて、守りの駒に阻まれてるので。守りの駒から攻めて、玉は最後にとっておけば良いですね」

山本「将を射んとすれば(先ず馬を射よ)…ですか」

斎藤「(笑)それは、正にそうだと思いますね。だから、ここ(第19図)でも王を攻めずに、△7五桂や、△7八銀とかも普通ですけど、ちょっと変わったところでは△2七金とか、挟み撃ちにしていく手もありますね。ここはコンピュータの勝ち方に注目ですね。割とどう指しても優勢、勝勢に近いですね」

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 以下、Ponanzaが寄せ切り、挑戦者が投了しました。

 山本「本局はどうでしたか」

斎藤「そうですね...後手が一方的に攻める展開でしたけど、森下システムの課題といえる展開だったので、やむないところも正直あります。細かいところが勝負に大きく直結してしまっているんですよ。この将棋だと、一方的に攻められて終わっているようにみえますけど、仕掛けられる直前に勝負が決まってしまっているくらい...▲4六歩、▲4七銀、▲3七桂、この3手を何かに代えておくべき...というのが僕の第一感ですね」

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この勝負についてご興味のある方は、ぜひニコニコ動画のタイムシフトをご覧いただきたいと思います。番組の後半では、アマチュア強豪の今泉健司さんや中川慧梧さんも出演されておりました。また、山本さんが現在のコンピュータ・ソフトの課題や問題点について言及されるなど、とても見所の多い良い番組だったと思います。

 

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