ぶたろうノート

棋力向上のための覚書

大平武洋五段 電王戦を語る

先日のニコニコ動画での第3回将棋ウォーズ名人戦 最終日 生中継では、大平武洋五段がゲストでした。番組中盤で、大平五段がponanzaと将棋ソフトについて語ってくれました。以前から、ご自身のブログなどでも議論を喚起するような興味深い発言をされていた大平五段ですが、ここでも電王戦に関する見解が興味深いです。また、大平五段に対するponanzaの開発者山本一成さんの反論がとても興味深かったです。ああいう議論(と言って良いと思ってます)はありそうで、なかなか無いんじゃないかと思いました。

 

8分ほどの会話でしたが、まずはその前半部分を書き起こしました。

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山口恵梨子女流初段(以下山口)「大将戦にふさわしい、素晴らしい対局を指していただきましたが、ponanzaさんに。大平先生、電王戦第5局、いかがでしたか」

大平武洋五段(以下大平)「そうですね、あの…なんといったら良いんでしょう…僕もどちらかと言うとコンピュータの味方なんですけど…こういうとあれかもしれないですけど、思ったよりponanzaが苦労したのかな、という。もっと圧勝するのかな、という印象だったので。まあ、そうですね、前評判通りですよね。結構、人間誰がやってもきついと言われてた部分もあると思うので。特に終盤あたり、感服したというか」

山口「山本さん、コメントを受けて、いかがですか」

山本一成(以下山本)「どうなんでしょうかね。えーと…いや、かなり終盤までどちらが勝つかわからなかった局面がずっと続いてたんだと思うんですけど…むしろ、大平先生的には、どこがponanza弱かったとかありますか。是非聞きたいんですけれども」

大平「そうですね、僕の印象なんですけど、序盤がちょっと不安定かな、と。どうしたら良いかとかはわかんないですけど」

山本「序盤、判断が甘かったというか?」

大平「いや、うーん、なんて言うんですかね、やった感じというか、ソフトと戦った印象ですけど…ランダムなのかもしれないですけど…こう、(ソフトは)いろいろやってくるんですけど…ちゃんと定跡を覚えれば、もう人間は全然敵わないんじゃないかなといつも思っているんですけど。なかなか序盤が変な感じになるというか、序盤が安定しないというか。わかんないですけどね。これが序盤が安定したら、意外と大したことないのかもしれないんですけど」

山本「定跡っていうのは、定跡通り指せば、ということですか」

大平「そうですね。まぁ、一番定跡っぽかった将棋はツツカナと森下九段だと思うんですけど、何かああいう感じになっちゃうと、終盤絶対ミスしないみたいな印象もありますし、なかなか人間が押し切るのは大変かな、という印象なんですけど。豊島さんのときもponanzaもそうですけど、序盤で怪しく動いてくれるので、あれだったら、もしかしたら一気に大量リードを奪えて、そのまま勝負にならない感じになる可能性もあるのかな、っていうのは思うんですけど。

まぁ、でもponanza、みんな結構大将戦は、人間厳しいって思ってたと思います、プロ間では」

林隆弘(HEROZ株式会社 代表取締役)「ponanzaへの信頼があったと?」

大平「そうですね。何でしたっけ、166連勝でしたっけ…なかなかできないですよね、人間にはね」

山本「まぁ、体力的な話もありますからね」

大平「そうですね」

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大平五段は、「コンピュータの圧勝を予想していたが、思ったような展開ではなかった。その原因は序盤にあり、序盤を定跡通り指せば、さらにコンピュータは強くなる」と見ているようです。

しかし、この大平五段に対する、山本一成さんの反論がとても興味深かったです。山本さんの反論と自身の開発するソフトの理想を語ってくれた内容については、また近日中に書き起こして、アップしたいと思います。

 

余談ですが、やっぱり大平五段にはブログを再開してほしいです。大平五段自身のGPSと対戦した感想(平手ではGPSに敵わないけど、自分が角を落としたら勝ったとか)なども面白かったし、将棋界(というか将棋連盟?)に関する考え方とかも、あまり他の棋士からは聞けないようなものが多かったので、いつも楽しみにしてたのですが。

 

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