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斎藤慎太郎五段が語る「第3回電王戦 豊島将之七段 - YSS戦」

先日から複数回に渡り「電王ponanzaに勝てたらノートパソコンプレゼント! 挑戦者求む![ドスパラ大阪・なんば店]」について取り上げています。番組の冒頭では、斎藤慎太郎五段が、豊島将之七段がYSSに勝った対局を参考に、コンピュータの攻略方法を簡単に語ってくれました。

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豊島将之七段に学ぶコンピュータ攻略法

司会「斎藤さん、攻略法というか、理想の戦い方はあるんでしょうか」

斎藤「はい、そうですね、先日豊島七段が電王戦で勝った対局があったと思うんですけど、後日豊島七段からお話を聞く機会がありまして。あの将棋の勝因は、序盤から一気に終盤戦に持ち込んだことだっておっしゃられたんですね。

局面の話になるんですけど、横歩取り戦法から、一気に急戦を仕掛けるような手が出ました。その手自体の良し悪しは、豊島七段はわかってはいなかったらしいですね。研究はしてはいたけど、自信があったというわけではなく、とにかく早く終盤戦に持ち込んだ方が、中盤戦の自身のミスを減らせると思われていたそうで、僕はそういう考え方もあるのか、と思って凄い驚きを感じたんです。中盤戦の捻じり合いのときに、コンピュータは間違いづらいと思っていられるようなんですね、人間の方が間違いやすいというか。あの将棋だと、中盤戦と言われるような局面はありませんでしたから。

それでですね、今回のponanzaのPCを賭けた戦いは、参加される方の勝機ですけど、その中盤戦を通り越した急戦模様の戦いは理想ではあるかなと思いますね。昨日、電王戦で森下先生は惜しくも敗れられたとは思うんですけど、あの将棋も中盤戦が長くて苦労されたというのが僕の実感だったんで、あまり捻じり合わない戦い方っていうのが人間ができれば、勝機はあるかなと思っております」

山本「局面の話になってしまうんですけど、▲2一角と打ったところっていうのは、豊島先生は自信があったという感じだったのでしょうか」

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斎藤「僕も見てる方からすると、そうなんだろうと思っていたんですけど、あの手にも後手にはいくつか対策があったようですね。実戦は△3一銀と選ばれたんですけど、他にも2つほど分岐点があったようで…」

山本「△2五歩(参考1図)と△4四角(参考2図)...」

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斎藤「そうですね、△2五歩と△4四角という手がありましたから、▲2一角と打ったから豊島七段が勝ったというよりは、その後の数手で形勢が決まったというところが、細かいところですけど、あったんですね。だから、豊島七段も盤石で勝ったというわけではなかったというふうにおっしゃられていました」

山本「勝つときは、圧倒的な強さで勝ったように見えたんですけど」

斎藤「そうでしたね。あれはね、それはやはり終盤力はね、豊島七段の強さだったとは思いますね。それは他の棋士でもできたかどうかと思っていますから。あれは、豊島七段、見事な作戦家というところを見せたかなと思っています」

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豊島七段が1,000局近く指して辿り着いたコンピュータ戦略の結論が「中盤戦のない戦い」。では、なぜ中盤のない戦いという結論に辿り着いたのか。そもそも、中盤とはどういったものなのか。そちらは次回で。

マイナビ 将棋新世紀 PonaX
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